タイトル：這う指

いつのまにか同じ列の反対端にも観客が座っていた。
まだ宣伝が流れてる間に、前の方の席に観客が座る。
平日だからかして、
高齢の男性1人客もポツポツと来る

何も無い訳が無い…
わざわざ服の中身を指定する彼がどんなことを考えているのか…わからない訳じゃ無い。

見慣れた映画製作会社のマークが現れ
本編が始まる

もう一度座り直す

始まってものの数分で
彼の肘が…
手摺りよりコチラへ。
肘が当たる自分の腕を、右手で庇うように
身に寄せる

さらに身ごとコチラへもたれかかるような
姿勢をとる彼。

肘をわずかに前後へ擦りつける…
私の腕に。

私の反応を面白がって
時々顔をコチラに向けてくるが…見ないようにする。
顔を右に背けると
今度は左首筋に「ス…っ。」
思いもよらなかった刺激に驚いて「ビクっ…」

「やめてください…」と声にならない声を出し、
彼の居る方向だけを見る。

少しの間…何もしてこない。

スクリーンが少し暗くなった時…
膝に置いたコートと、スカートの間に
ゆっくりと指先が滑り込む
すぐその指を遮るように、左手で自分の腿を庇う
また、指が差し込まれる
手で払う…また、差し込まれる
何回か繰り返すと
指を痛いくらい握られ逆に押しやられる
抵抗をやめると…
膝から腿を指が這う。　　
ストッキングの肌触りを楽しむように…

続く…